久子さま

久子さまを包んだ「愛子さま」の“慈愛” 「おばさま、だいすき…」

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文/歩紀柚衣・監修/編集部

11月21日という悲しみの日

先月のことになるが、11月21日、両陛下は即位礼正殿の儀や大嘗祭などの即位に関する一連の儀式を終えたことを伊勢神宮へ報告する「親謁の儀」のため、三重県を訪れた。

あまり報道されないが、即位礼後初めての地方巡幸が行われた11月21日は両陛下にとって忘れられない出来事が起こった日である。そう、17年前の11月21日、スポーツの宮様として知られた高円宮憲仁親王が亡くなったのである。

今回はこれまで語られてこなかった高円宮家と両陛下の間のご交流を高円宮家関係者から聞く事が出来た。

高円宮家関係者はこう語る

「高円宮殿下がお亡くなりになった時は、先日ご長男をご出産された絢子さまがまだ12歳のころでした。殿下の御遺体が宮邸に運ばれ、斂葬の儀まで1週間ほどありましたが、『おとうま(「お父様」の意、高円宮家ではこう呼ばれていた)と一緒に寝る』とお布団を持って、遺体の置かれた広間でお眠りになっていた。その絢子さまがもうお子様をお産みになる歳とは、時の流れの早さを実感します

(絢子女王殿下を見送る高円宮妃殿下)

当時は、両親の三笠宮ご夫妻をはじめ、両陛下(現上皇ご夫妻)に皇太子ご夫妻(現両陛下)も慰問にいらしていました。『悲しいですね』『気を落とさずに』と、皆さま弔意をお話になっていただきました」(高円宮家関係者)

関係者の談では、特に当時皇太子だった天皇陛下の悲しみは深いものだったそうだ。

「陛下は高円宮殿下とは年齢も近く(6歳差)、陛下にとっては兄のような存在で、付き合いを続けてこられました。愛子さまがお生まれになった時も、我が事のように喜んでくださったのも、高円宮殿下でした。陛下にしてみれば『ようやく子供ができ、家族ぐるみでもっと交流したかった矢先に…』と、悲しいというより、悔しいお気持ちが強かったのでしょう。口から出るのは『慰め』の言葉ですが、お顔には『苦しさ』に溢れていましたね」(高円宮家関係者)

東宮御所に久子さまを招いた両陛下

そして、1周忌を過ぎたころの2003年、両陛下は東宮御所に久子さまを食事会に招かれたそうだ。久子さまは13歳になった絢子さま連れだって参邸した。当時2歳の愛子さまは雅子さまに抱かれ、ソファに座って気が置けない団欒の場が設けられた。

(典子女王殿下、久子妃殿下、絢子女王殿下)

1周忌を終えた久子さまと絢子さまには、皇太子殿下も雅子さまも「もう過ぎたことを話すのはよそう」と、あえて1周忌の話はしなかったらしい。

「ソファでしばらく団欒した後、皇太子殿下(現天皇陛下)から『愛子がプレゼントを用意しているんですよ』とおっしゃいました。愛子さまは恥ずかしそうに雅子さまの手を離れると久子さまの所に駆け寄り、照れ笑いをしながら中に手紙を忍ばせた折り鶴をお渡しになったのです。手紙には、覚えたてのひらがなでこう書いてありました。

『ひさこおばさま あやこおねえさま だいすき』と。

拙いひらがなと幼い愛子さまの笑顔に、高円宮殿下と幼少の娘を子育てしていた時期を思い出されたのでしょうか、久子さまは『ありがとうございます』と会釈され、折り鶴と手紙をそれぞれ大切にバッグにしまわれました」(高円宮家関係者)

幼い2歳の愛子さまからの「お心遣い」は久子さまと絢子さまにもしっかり届いただろう。インタビューをしながら図らずも筆者も胸が熱くなった。

おばさま だいすき…

死別遺族のケアに詳しい専門家は愛子さまの手紙について「死別の遺族には『元気を出して』という直接の励まし言葉はNGです」とこう語る。

「大切な人を亡くした方には、ただ、何も言わず、そっと側に寄り添う態度が必要です。よく『夫を亡くしたこの苦難は試練』などと言われますが、『苦難の意味』は他人から示されるのではなく、自分で見つけ出すものだからです

こうした理解に立って愛子さまの手紙を見ますと、『だいすき』という単純で優しい言葉から『ありのままの自分が愛されている』ことが感じられるかと思います。

この言葉には『悲しんでもいいんだよ、苦しむのが当たり前だよ』と、悲嘆の中にいる人を包んでくれる温かさがありますね。2歳の女の子が渡してくれたのでしたら、受け取った方はまるで天使が見守ってくれるように感じたでしょう」(死別ケアの専門家)

手紙を受け取った久子殿下がその後、未亡人として高円宮家の当主となり、皇室を下支えする国際派宮家として、華々しくご活動されていることはあえて言うまでもない。

「当主を亡くした高円宮家が悲しみから癒えたのには、愛子さま初め、両陛下の心の支えがあったことは間違いありません」(高円宮家関係者)

両陛下や愛子さまがいなければ、現在の高円宮家のご活躍は見られなかったかもしれない。


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